企業再生
企業再生とは、経営不振に直面している企業の業績不振の原因を改善して企業の維持、再構築を行うことをいいます。
具体的には、過剰な設備投資や営業力不足、競争力不足、事業の多角化の失敗など、企業の業績を悪化させた要因の解消や不採算事業を切り離すことで、経営を再生・安定させます。企業再生には不採算部門の切り離しや法的整理、M&Aなど、いくつかの手法があります。
企業の経営を見直し、不振の原因を取り除くことで再生させる手法である「企業再生」に興味はあるが、どうすれば良いのかわからない、どうすれば成功するのか不安に思っている人も多いのではないでしょうか。
債務超過など経営悪化の要因を取り去ることで、経営破綻状態の企業を立直らせた事例もあります。
様々な事業に過剰投資したことで経営悪化した「ダイエー」
中内功氏が、高度経済成長期に主婦の方へ安く、良いものを販売する「主婦の店ダイエー」として創業し、スーパーマーケットのチェーン展開を成功させた、ダイエーの事例を取り上げてみましょう。
株式会社ダイエーは、1957年、大阪市に「主婦の店・ダイエー薬局」1号店を開店します。薬品や食料品、日用雑貨の大量仕入れ、「価格破壊」といわれた安売り販売により事業を拡大し、スーパーマーケット「ダイエー」を全国チェーン展開し、1972年には旧三越を抜いて小売業界で売上高トップに立ちました。創業当初より薄利多売の安売り販売に加え、50年代に米国で台頭したプライベートブランド(PB)戦略をいち早く取り入れるなど、流通コストを抑えた効率的なビジネスモデルを確立したことでも知られます。
日本初の本格的な郊外型ショッピングセンターをオープンさせ、グループ内のハンバーガーチェーン「ドムドム」をテナントに入れるなど、斬新なビジネス手法を採り入れ、長らく流通業界のトップに君臨しました。創業者である中内功氏は「流通業界の風雲児」とも称され、カリスマ経営者として威光を放ち、福岡ダイエーホークスの経営やコンビニエンスストア「ローソン」、出版大手のリクルート社など、多角化経営に突き進み、一時は300社を擁する巨大グループ会社へと成長を遂げます。
ところが、バブルが崩壊するとともに多額の負債を抱えることになります。ダイエーは、バブル期に土地を次々と購入して建物を建設し、価格の上昇を見込んだ将来の含み益を狙うビジネスモデルや、相乗効果(シナジー)を狙った事業の多角化を行っていました。そのため、バブルが崩壊するとともに多額の負債を抱えることになり経営に大打撃を与えました。
それ以外にも次世代の新業態として期待された欧米の流通スタイルを日本に輸入しながら、日本の消費者に受け入れられることなく、大きな赤字を生んだことがあげられます。そして2004年に産業再生支援機構による経営再建が決定され、本格的な企業再生へと動き出しました。
福岡ダイエーホークスはソフトバンク、ローソンは三菱商事へ売却されたのをはじめ、リクルートは独立、福岡ドームは外資系投資会社へ売却するなど、大きな事業の柱であるグループ会社の再編が進む中、不採算のダイエーの店舗を大量に閉店させるなど、企業再生に向け大きなかじ取りがなされました。その後、本体のダイエーは総合商社丸紅の傘下を経て、2013年にはイオンの連結子会社となります。
3度の金融支援を受け、産業再生支援機構からも支援を受けるなど、約10年にわたり企業再生が進んでいたにも関わらず、ダイエーは赤字体質から抜け出すことができませんでした。その後2014年には、上場廃止とともにイオンの完全子会社となり、ダイエーは事実上消滅することになりました。リストラをはじめ様々な企業再生プログラムが進む中、安価なアパレルブランドの台頭やダイエーの店舗の老朽化が進み、思うようにスクラップ&ビルド*2にコストを捻出できなかったこと、また安さの追求だけでは、いつまでも収益に結びつかなかったことも企業再生に失敗した大きな要因といわれています。
歴史ある企業を再生するには、競合他社と戦う体力やブランド力を維持・向上できるかが重要なカギとなった事例といえるでしょう。
※出典:Fundbook